「第23回のべおか天下一薪能」演目紹介

能 「海士(あま)」赤頭三段の舞

藤原不比等(淡海公)の嫡子である房前大臣は、亡き母を追善しようと讃岐の國志度の浦を訪れます。かつて父の淡海公は、自身の姉が唐帝の后になったことで贈られた面向不背(めんこうふはい)の珠を龍に奪われ、それを取り返す目的で身分を隠してこの浦に暮らしていました。その時に出会った一人の海士と結ばれ、生まれた子供が房前大臣でした。

 母の名残をさがしていた大臣の前に一人の海士が現れます。大臣の従者は海士に海松布(みるま)を刈るよう頼みます。それをきっかけに海士はつれづれなるままに、昔話をはじめます。淡海公と出会い男の子を産んだ海士は、もし私が海に潜り、龍宮から珠を取り返したならこの子どもをあなたの跡継ぎにしてくれますかと尋ね、それを承知させると、海士は海に入り珠を取り戻します。追いかけてくる龍から珠を守るべく乳房の下を掻き切りその中に隠して戻ってきますが、海士は息絶えて亡くなってしまいます。その海士こそ、命と引き換えにして子どもの出世を叶えた母であると名乗り大臣に手紙を手渡すと海の底に消えていきます。大臣は手紙を開き、あの世で成仏できぬまま助けを求める母の願いを知り、志度寺で十三回忌の追善法要を執り行います。そこに龍となった母が現れ、さわやかに舞い、ようやく仏縁を得た喜びを表します。

●登場人物

・海士(前シテ) 龍女(後シテ)

・房前大臣(子方)

・大臣の従者(ワキ)

・従者(ワキツレ)

・浦の男(間)

●使用が予想される能面

・前シテ 深井   後シテ 泥眼

深井
泥眼

能「景清(かげきよ)」

源平の戦い源氏の勝利で終わった後のことです。平家方の武将で、勇名を馳せた悪七兵衛景清は、源氏に捕らえられた際に「源氏の世を観たくない」と自ら盲目となり、日向の國へ流されてしまい盲僧となります。その景清にはかつて尾張の國熱田の遊女との間に一人娘人丸がいました。人丸は鎌倉に住んでいましたが、風の便りに景清が存命していることを知り、日向の國宮崎の里の景清を訪ねます。ちょうど景清が落魄した身の上を嘆いているところに、人丸が従者と共にやってきます。従者は「景清という人を知りませんか」と声をかけますが、景清は悟られまいと盲目の私はそんな人を見たことがありませんと他人のふりを押し通します。ひとまず、その場を離れた人丸たちですが、里人に聞くと、やはりさっきであった盲僧が景清であると聞き、里人の仲介で対面することができました。そこで景清は、人丸の求めに応じ、屋島の戦いの様子を語ります。語るほどに熱を帯び源氏の三保谷四郎(みほのやのしろう)と兜のシコロを引っ張って応戦した名勝負の場面を手ぶりも交えながら語ります。娘と会い、過去の武将としての自分の魂を取り戻したように景清は父として、私はもう長くは生きられないから、人丸は帰って自分の跡ことを弔うように頼み、親子は別れます。

延岡市教育委員会提供

●登場人物           

・景清(シテ)

・人丸(ツレ)

・人丸の従者(ツレトモ)

・宮崎の里人(ワキ)

●予想される能面

 景清

 小面

景清
小面

狂言 「魚説経(うおぜっきょう)」

摂津の國兵庫の浦の漁師は、殺生が嫌になったので、にわか出家となり旅に出ます。その旅路の途中、信心深い人と出会います。その人は持仏堂で法事をしてくれる僧を探していたとこで、さっそく元漁師のにわか僧に説経を頼みます。頼まれても・・・もともとは漁師でお経など知らないにわか僧は、苦し紛れに、いかにもお経に聞こえるように「説法を述べんと、イカにもススキにススけたるクロダイの衣に・・・」と魚の名前づくしでもっともらしく語るのでした。ただただ魚尽くしの言葉遊びを面白がる物語です。

●登場人物

・漁師

・男